額作品の修復

長押の上に飾る和紙や絹で描かれた横額の修理を承ります。
これらは通称、欄間額や扁額とも呼ばれます。和紙や絹に描かれた(書かれた)書や絵であれば、修理の対象となります。
目次
➀ 額作品の修理と額縁の再利用
② 額作品の修理と額縁を新しく
③ 作品修理と既成品の額縁で保存
④ 作品の修理のみ
額作品修理に関するよくある質問

➀ 作品修理と額縁の再利用

撮影環境やご覧になる出力画面の設定などにより、実物の色合いと多少異なる場合がございます。
修復事例:犬養木堂筆・・・昭和初期の首相

修理前

損傷度 甚大 ★★★★★

額寸法 タテ 約43㎝ ヨコ 約95㎝

和紙に墨で描かれている

劣化・亀裂・欠損・墨が粉状化 

アクリルガラスなし

修理後

作品寸法 タテ 約29㎝ ヨコ 約68㎝

作品の修復により、保存性が向上

金箔に補填と塗り縁に補彩により違和感を緩和

細かい傷や補修痕は残ります

詳細 修理前後

作品の修復前

和紙の劣化により、自然と亀裂が生じます。

和紙の欠損もあります。

額縁の修繕前

金箔に穴が開いてます。

作品の修復後

亀裂部分の痕は残りますが、裏打ちを替えることで保存性が向上します。

額縁の修繕後

欠損部分に金箔を補填します。

目立たなくなりますが、痕は残ります。

 

修復工程:額装の解体

最初に額縁を慎重に解体します。額縁は、下地の上に貼られた金箔布や、塗りの縁で構成されています。その額縁に和紙に書かれた作品が直接貼られていることが多く、作品と額縁を安全に分離し、それぞれを専門的に修復・修繕します。

修復工程:作品の修理

修理前

和紙の劣化がかなり進んでいました。

加えて、墨に粉状化が起こり、文字の崩壊が進んでいました。

亀裂や、落款下には穴が開いています。

修理後

裏打ちにより、元の状態を回復。

墨に粉状化を改善して、これ以上の文字崩壊を防止しました。

 

修復工程:額縁の修繕

額縁の構造を理解することは、適切な修繕に不可欠です。

 

 

➀ 下地  木材で格子状に組んだ土台です。通常、その上に数回の和紙を貼り重ねて基礎を形成します。
② 縁  下地の周囲に取り付けられる部分です。木地をそのままの「木地枠」や、漆などで塗られた「塗り枠」、ステンレス製などの様々な種類があります。
③ 金箔 下地の上に金箔を貼っています。
④ 作品 金箔の上に作品を貼っています。

 

額 修理前

 

修復工程:修復した書作品を修繕した額縁に再び貼ります

修復が完了した書作品は、元の位置に合わせて、修繕した額縁に再度貼ります。

修理の参考価格

実際の修理費用は、作品の損傷度合い、大きさ、使用する材料によって異なります。以下はあくまで目安としてご参照ください。
正確な費用は、作品を拝見した上で個別にお見積りいたします。
・書 修理費  修理工数 ★★★☆☆ 30,000円
・額縁修繕費  20,000円
・合計費用   50,000円

 

② 作品修復と額縁の新調

作品を修復しても、既存の額縁が使用できないほど損傷している場合や、より良い保存環境を望む場合は、額縁の新調をお勧めします。作品の大きさや形状に合わせて、額縁の専門業者にオーダーメイドで製造を依頼します。
既製品とは異なり、作品に合わせた仕上りと保存環境が特徴です。
最近の住宅では気密性が向上し、エアコン等の使用により温湿度が急激に変化する環境が増えました。
昔の額縁では、アクリルガラスがないものも多く、劣化に加えて外気の影響を直接受けて、作品に亀裂が入ることが見られます。
現代の額縁では、作品の保護のために基本上アクリルガラスを使用します。
アクリルガラスと作品の間に適切な空間を作ることで、作品の顔料がガラスに付着するのを防ぎ、より安全に保存できます。

額縁の構造 (新調時の一例)

新しく仕立てる額縁の主な構造は以下の通りです。(仕様はご希望に応じて変更可能です)

 

 

 


➀ 下地 :木材を格子状に組み立てた堅牢な土台です。   
その上に数回の和紙を貼り重ね、作品を支える基礎となります。

 

 

 

 


② 縁:額縁の周囲を彩る部分で、木地を活かしたものや、塗りの種類があります。
③ 中性紙マット:左の画像で金色部分 にあたります。 書画の周囲に額枠だけでは物足り巻く感じたり、作品とガラスが直接接触することの防止になります。マットは作品を美しく飾り、視覚的に引き立てる効果があります。作品の長期保存を考慮し、酸を発生させない中性紙マットに意匠として表装裂を貼ります。(大きさによりできない場合があります)  

 

⑤作品 下地の上に修復された作品を貼ります。

③ 作品修理と既成品の額縁での保存

お手持ちの額縁を利用して、修復した作品を保存します。

 

修復事例:元は屏風に貼られていた扇面作品

扇面 修理前

タテ75㎝  ヨコ34.5㎝ 

和紙に雲母加工

(伝)木下長嘯子・・・安土桃山~江戸時代初期の武将

扇面 修理前 拡大
扇面 修理後

右側に極め札が貼り付けています。

極め札には、表裏に文字情報がありましたので、取り外して、別保存します。

貼り付けられていた極め札の痕は、違和感がありましたので、補彩して緩和いました。

 

額縁の一部加工

ご所有の額縁をお預かりし、和紙や表装裂を貼って、額装を行います。
例:扇面の土台は、雁皮紙   裂は正絹無地   枠は木地

 

④ 作品の修理のみ

額縁から作品を取り外し、作品自体の修復のみを行います。
作品の修理が完了した後、旧額縁はそのままお客様にお返しします。お客様ご自身で作品をセットしていただく形になります。

 

額作品修理に関するよくある質問

現時点で利用している額縁を作品修理後にまた使用したいのですが?

はい、可能です。ただし額縁の損傷が著しい場合は、新調をお勧めする場合があります。詳細については、現物を拝見させていただいた上でご説明いたします。

アクリルガラスのみ入れることは可能でしょうか。

構造上、可能かもしれませんが、作品保護の観点から、額縁全体の構造や作品との空間を考慮することが望ましいです。詳細については、現物を拝見させていただいた上でご説明いたします。

額縁を新調するとはどういうことですか?

現状の額縁に、アクリルガラスがない、または縁に大きな損傷があるなど、額縁そのものを新しく交換したい場合に、作品に合わせて新規で製作することです。修理した作品を、その新しく製作した額縁に貼ります。

作品のみ修理するとはどういうことですか?

作品を額から外して修理を行い、その後、作品単体でお客様にお返しします。額縁に再度貼ることはありませんので、お客様ご自身で、額縁に入れていただくことになります。

作品は傷んでないようですが、額の布地やマットを取り替えたいのですが。

はい、可能です。先ずは現物を拝見させていただき、その後に、お見積り案や修繕方法についてご説明させていただきます。