古画 掛け軸の修理例|表具師(表装技能士)錦司堂

古画 掛け軸修理の項目

修理例1 墨画 掛け軸 
修理例2 日本画 掛け軸大型  準備中
修理例3 墨画 掛け軸 
修理例4 墨画 掛け軸 準備中
*撮影環境やご覧になる出力画面の設定などにより、実物の色合いと多少異なる場合がございます。 

修理例1 墨画 掛け軸 

鷹図・・・武将に好まれて、屏風・掛け軸・障壁画に描かれていたようです。

掛け軸 修理前

損傷度 ★ ★ ★ 重 

掛け軸の破損

展示は困難

掛け軸 修理後

表装は紙から布に変更

古書画 修理前
古画 修理前

損傷度 ★ ★ ★ 重

顕著な虫穴・横折れ

古書画 修理後
古画 修理後

細かい損傷部分や修理痕は、よく見ると判別がつきます。通常の鑑賞では、損傷部分は目立ちません。

古画 掛け軸の状態を調査

【古画の寸法】タテ 41㎝ ヨコ 53㎝
【古画の状態】 和紙に墨で描かれた鷹図。虫による大きな損傷・折れや引っ掻き傷もみられます。
【掛け軸の寸法】 掛け軸の上部が破損の為、本来の寸法は不明です。
【掛け軸の状態】 紙による掛け軸もあり、破損や劣化による損傷。閲覧・展示は困難。

主な修理作業

先ずは、墨部分にニカワ水溶液を塗って強化した後、旧裏打ち和紙を新しく修復に適した和紙に取り替えます。作業途中で虫穴に和紙で補填します。また補填した部分は、僅かに色が白いので、補彩して調整します。

修理前 部分拡大

白い部分は、虫が食べた痕です。

その左側に黒い部分が2カ所みられます。

そちらも、別の種類の虫が穴を開けた痕です。

裏面

左の画像の、裏側に当たる部分です。

旧裏打ち和紙を剥がしますと、欠損部分が多く見られます。

表面で、白く見えたのは裏打ち和紙が剥き出しになっていたことが後で分かります

修理後 部分拡大

欠損部分に、同種の和紙を補填します。

その後補彩をして、違和感をなくします。


掛け軸に表装


古い鷹図ですので、時代色が付いた裂で、落ち着いた感じに表装しました。
表装形式・・・二段表装で風帯はなく、少し重厚な雰囲気を避けました。
表装裂の配色・・・鷹図は時代を経ているので、墨の線や輪郭が鮮明さに掛けています。
また表装裂の模様や色に、鷹図が埋もれないように気を付けました。
表装裂の品質・・・鷹図の周囲には、金襴裂。中廻しに正絹緞子・天地に正絹無地裂

修理の参考価格

作品の損傷度合い、大きさ、表装材料などによって価格は変動いたします。別途、保存箱が加算される場合がございます。
仏画修理費  修理工数 ★★★☆☆  30,000円
掛け軸表装費  二段表装 40,000円
合計費用   70,000円


修理例2 日本画 掛け軸大型  準備中

古画 掛け軸の状態を調査

(伝)狩野柳伯・・・江戸時代の前期の狩野派の絵師
【古画の寸法】タテ 30㎝ ヨコ 95㎝
【古画の状態】 絹に一部岩絵の具で描かれている。水によるシミや折れが多数ある。
【掛け軸の寸法】 タテ 127㎝  ヨコ107.㎝
【掛け軸の状態】 表装裂に、水シミや虫損がある。破損や劣化がある。

掛け軸修理前
掛け軸修理前 大型

通常の掛け軸より、大幅になります。

損傷度 ★ ★ 中 

掛け軸の劣化と損傷

水とみられる汚れ

古画 修理前 右側
古画 修理前 右側

損傷度 ★ 軽度

劣化は軽いと予想

古画 修理前 右側
古画 修理前 左側

水シミは完全には落ちないと予想

薬品を使用せず、なるべく薄くする

掛け軸修理前
古画 拡大

強い横折れがある

主な修理作業

剥落止め

絵具部分に膠水溶液を塗布して強化します。

裏打ち和紙取り替え

作品を支えている和紙を新しく取り替えます。


修理例3 墨画 掛け軸 

(伝)池田治政・・・江戸時代 岡山藩の大名

掛け軸 修理前

損傷度 ★ ★ 中 

掛け軸の傷みと汚れ

展示は可能

掛け軸 修理後
古画 修理前

損傷度 ★ 小

虫穴・横折れ

古画 修理後

損傷部分は解消されました。

但し、シミや時代の色はそのままです。

保存上、薬品漂白なし。

古画 掛け軸の調査

【古画の寸法】 タテ 80㎝ ヨコ 27㎝
【古画の状態】 横折れや虫穴があります。また過去の修理痕もみられます。
【掛け軸の寸法】 タテ 155㎝ ヨコ 37㎝
【掛け軸の状態】 掛け軸全体の表装裂の劣化や損傷。
【修理方針】 新しく掛け軸を表装し直しますが、一文字や風帯に使用されている裂は再使用します。

主な修理作業

剥落止め

絵具と落款に膠水溶液を塗布 →洗浄で水分に反応しやすい部分を強化

裏打ち和紙取り替え

作品を支えている和紙を新しく取り替えます。

虫穴補填

和紙で補填

横折れ改善

折れた部分の裏側に補強

補色(補彩)

虫穴に補填した部分は白いので、違和感緩和で補彩

掛け軸に表装

可能な部分には、修繕して再使用しました。
表装形式・・・三段段表装。絵や書の作品に合います。 表装裂の配色・・・時代を経た作品ですので、渋みも加えました。表装裂の品質・・・一文字や風帯の金襴裂は再使用。中廻しに正絹緞子・天地に正絹無地裂。軸先は再使用。

修理前 一文字付近

蝶の模様の金襴裂が、一文字と風帯部分に使用されていました。池田大名家は、蝶の模様をシンボルにしていたことに因んでいると思われます。

修理後 一文字付近

蝶模様の裂を修繕して再使用しました。

修理前 風帯付近
修理後 風帯付近

風帯は修繕しても、旧折り目の損傷は再び発生します。長さを付け足して、折り目部分を変更しました。

修理の参考価格

作品の損傷度合い、大きさ、表装材料などによって価格は変動いたします。別途、保存箱が加算される場合がございます。
古画修理費  修理工数 ★★☆☆☆  20,000円
掛け軸表装費 三段表装  60,000円
合計費用    80,000円


修理例4 墨画 掛け軸 準備中

(伝)狩野探玄・・・文化文政期の絵師  

掛け軸修理前
掛け軸修理前

掛け軸 修理前

損傷度 ★ ★ ★ 重 

掛け軸の破損

展示は困難

古画 修理前
古画 修理前

損傷度 ★ ★ ★ 重

虫穴・横折れ

描かれた絹地の劣化

修理中に判明した前回修理の糊濃度の高さ(剥がれない)


古画 掛け軸の調査

【古画の寸法】 タテ 50㎝ ヨコ 70㎝
【古画の状態】 見た目以上に劣化が激しい 
【掛け軸の寸法】 タテ 142㎝ ヨコ 73㎝
【掛け軸の状態】 風帯の欠損等の掛け軸の損傷。
【修理方針】 古画の修復後に、新しく掛け軸を新調します。

主な修理作業

作品表面に裏打ち打ち

絹地の劣化が予想以上に進んでいました。加えて前回の表装で、糊の接着が強いために無理に剥がせば損傷につながります。
そこで、先ずは古画の表面に仮の裏打ちを行い固定して、期間をかけて裏打ち和紙を剥がします。