書 掛け軸修理

 古い書 墨蹟 書状 掛け軸の修理例

墨蹟・大名の書状・古文書の掛け軸の修理例

 修理例1 大名書状 掛け軸

*情報保護で、一部画像を加工しています。また撮影環境や出力画面により、実物と多少の色合いの変化があります。

細川宗孝・・・江戸時代中期の大名。肥後国熊本藩5代藩主。熊本藩細川家6代当主。

 

 

 書 掛け軸の状態を調査

【書状の寸法】  タテ 41㎝ ヨコ 55㎝
【書状の状態】 茶色のシミが本紙(作品)に広がっています。おそらく、掛け軸の裏側に使用している和紙から発生しているので、それが表面に転移したようです。
【掛け軸の寸法】 タテ 141㎝ ヨコ 66㎝
【掛け軸の状態】 掛け軸全体にシミが広がっています。
【修理方針】 シミ落としを行いますが、歴史史料でもあるため、薬品等過度な洗浄までは行いません。掛け軸自体は、表装裂が化学繊維で劣化が早く進んでいました。正絹裂の材料で、全て新しく仕立てます。

 修理作業への準備

文字部分に、膠(ニカワ)水溶液を塗って強化します。
今後の作業は、水を使うことになります。墨が水分と反応して文字が滲む場合がありますので、予防の意味で行います。

 書状の修理

裏打ち和紙を取り替えます。
書状の場合は、書かれた和紙が分厚いことがよくあります。

分厚い和紙ですと、巻く時に固くて巻けないことや、巻いても横折れが発生します。
既に掛け軸になっているので、なるべく裏打ち和紙の厚さを調整します。
また横折れも多く発生していたので、処置を行いました。

 

 

洗浄


掛け軸に表装

表装裂を裏打ち後に、書状の周りに付け足していきます。

形式は三段表装
書状が分厚いので、裏打ち和紙で掛け軸の厚さをなるべく調整することで掛け軸に仕立てます。また熊本藩主細川宗孝公に因んで、九曜紋を掛け軸に取り入れました。
金色の輝きを抑えた、時代を経過した資料の雰囲気に合う金襴です。
書状は、分厚い和紙に書かれていることが多く、掛け軸に表装すると巻き難くなります。そこで、保存する場合には、太巻き芯棒で大きく巻いて保存することが望ましいです。


 参考価格

作品の損傷度・大きさ・表装材料等により、価格は異なります。

 書 修理費     修理工数 ★★    20,000円
 掛け軸表装費   三段表装 上品 やや大型   70,000円
 合計     90,000円位

 

 修理例2 消息 掛け軸  

*撮影環境や出力画面により、実物と多少の色合いの変化があります。       

(伝)松花堂昭乗・・・江戸時代 僧。

 

 

書 掛け軸の状態を調査

【書状の寸法】  タテ 29㎝ ヨコ 44㎝

【書状の状態】 水シミ・劣化損傷。また過去の修理による損傷もあります。

【掛け軸の寸法】 タテ 120㎝ ヨコ 51㎝

【掛け軸の状態】 一部紙表装による、損傷と劣化があります。

主な修理作業

墨部分を強化 

膠(ニカワ)水溶液を墨部分に塗布して強化します。

裏打ち和紙を剥がして新しく裏打ち補強

旧裏打ち和紙を時間をかけて剥がします。前回の修理で、部分的に和紙に厚みがない箇所に和紙で均一に補填します。

補彩

補填した部分に、色を入れて周囲との違和感を調整します。

修理過程の変化


掛け軸に表装

旧掛け軸の中廻し部分に使用されていた裂(青色)は、雰囲気を残すために必要と判断。

洗浄した後に、裏打ち和紙を取り替えて改善しました。

但し、裂の劣化で端の部分までは、活かすことができませんので、寸法を少し縮小します。

また揉み紙は再使用できないので、新調しました。

参考価格

作品の損傷度・大きさ・表装材料等により、価格は異なります。

 書 修理費     修理工数 ★★★    30,000円
 掛け軸表装費   揉み紙による表装     40,000円
 合計     70,000円位


 修理例 3 一行書 掛け軸

*撮影環境や出力画面により、実物と多少の色合いの変化があります。

池田 斉敏・・・江戸時代後期の大名。備前岡山藩の第7代藩主。

 

 書 掛け軸の状態を調査

【書の寸法】 タテ 123㎝ ヨコ 31㎝                                     【書の状態】 絹に墨で書かれている。シミ(変色)がある。糊浮きや横折れがある。                 【掛け軸の寸法】 タテ 186㎝ ヨコ 43㎝                                   【掛け軸の状態】 表装裂の劣化や糊離れ。                                    【修理方針】 シミ落としを行いますが、歴史史料のため、薬品等過度な洗浄までは行いません。水のみで丹念に行います。掛け軸自体は、表装裂の再使用ができないために新調します。保存箱がありますので、収納できるよう調整。

 修理作業への準備

文字と落款部分に、膠(ニカワ)水溶液を塗って強化します。
今後の作業で、水を使用することになります。その際に、墨が水分と反応して文字が滲む場合がありますので、予防の意味で行います。

 裏打ち和紙を剥がす

旧裏打ち和紙を剥がします。糊浮き(糊剥がれ)から、簡単に剥がれます。

 洗浄と修理作業

絹にシミがある場合、水の洗浄では落ちないことが多いと感じます。よって超音波によって洗浄しました。
しかし、期間と回数を重ねても殆ど変化はありませんでした。歴史史料でもあるので、薬品漂白は控えました。

 

 掛け軸に表装

大名の書の雰囲気に合うように表装裂を選択し、表装します。
周囲の裂は正絹緞子で、宝尽くし模様があります。

軸首は、多少の亀裂や汚れがあっても、再使用しました。

また掛け軸の保存箱があるので、再使用しまし、掛け軸寸法を箱に合わせて調整しました。

掛け軸修理で、保存条件も変化することもあります。
長い期間、掛け軸と一緒に残ってきているので、なるべく再使用したいものです。

 

 

 

 参考価格

作品の損傷度・大きさ・表装材料等により、価格は異なります。

 書 修理費     修理工数 ★★    20,000円
 掛け軸表装費   袋表装     60,000円
 合計      80,000円位