神図 神号 掛け軸修理

 古い天照皇大神 神図 掛け軸の修理例

天神様や神社関係の掛け軸を修理して後世に残します。

 修理例1 天照皇大神 掛け軸

撮影環境や出力画面により、実物と多少の色合いの変化があります。

 

 神号 掛け軸の状態を調査

【ご神号の寸法】  タテ95㎝ ヨコ26㎝
【ご神号の状態】  和紙に墨で書かれている。 過去修理歴あり
劣化はあるものの、和紙や墨も状態が良いので、洗浄により酸化物質をある程度洗い流せると判断。
但し一部の水シミ(油性の可能性)は、薬品を使わないので全く落ちないと予想。
【掛け軸の寸法】 タテ157㎝ ヨコ35㎝
【掛け軸の状態】 表装裂の劣化や破損  風帯(上部の2本の縦帯)が欠失
【掛け軸表装の方針】軸首は再使用 他は新調

 修理作業への準備

墨部分に、膠(ニカワ)水溶液を塗って強化します。

 洗浄

噴霧器で霧の様な水を与えて、下に敷いた和紙に汚れ等を転移させます。油の様なものは、変化なし。

 補填と裏打ち

裏打ち和紙を剥がすと、見えにくかった虫損痕が出てきました。

虫損の形より少し大きく切って、新しく和紙を補填しました。

補填した部分は白く違和感があるので、後で補彩をおこない違和感を緩和。

 

 

 補彩

上記の欠損部分に補填した和紙に色を付けます。周りと同じ色よりは少し薄めにします。


 掛け軸に表装

神号修理の後に、新しく掛け軸に表装。
また神号に相応しい神宮仕立ての形式に変更。

表装の模様は、よく神社系の表装に使用される小葵紋を選択。

神号周辺の裂・・・本金襴 (代用金ではない) 外側の裂・・・上品正絹裂
軸首・・・再使用 



 参考価格

作品の損傷度・大きさ・表装材料等により、価格は異なります。

 神号修理費     修理工数  ★★★   30,000円
 掛け軸表装費   神宮仕立て 上品    70,000円
 合計    100,000円位

 

 修理例2 天神図(菅原道真公)掛け軸

撮影環境や出力画面により、実物と多少の色合いの変化があります。                             

 

 天神図 掛け軸の状態を調査

【天神図の寸法】 タテ 78㎝ ヨコ 33㎝                                    【天神図の状態】 和紙に顔料で描かれている。剥落・虫穴。 過去の本格的な修理歴あり。              【掛け軸の寸法】 タテ 157㎝ ヨコ 40㎝                                   【掛け軸の状態】 表装裂の劣化や破損                                      【修理方針】 一文字の印金裂は再使用。軸首も再使用 他は新調。

 

 絵具部分を強化

膠(ニカワ)水溶液を絵具部分に塗布して強化します。落ち易い絵具には数回塗布を繰り返します。
緑青という岩絵の具で、鉱物が原料です。古くからよく使用されているようです。
緑青部分の裏面の和紙は変色して、場合によっては和紙繊維を傷めている場合があります。

 旧裏打ち和紙を剥がす

外側の裏打ち和紙を順番に時間をかけて剥がします。
一番外側の和紙・真ん中の和紙・天神図の直裏の和紙の三重構造です。

外側の和紙を剥がすと、前回の横折れ処置痕が現れ始めます。
茶色い帯の様なものが、横方向に多数ありました。
前回の修理は、いつ頃かは特定できませんが、江戸時代後期と想像します。
その時点で、強い横折れが生じていた証明になります。

 

直裏の和紙まで剥がすと、過去に補填した和紙も現れます。
全部で3枚重ねの和紙を取り除くことになります。

 

 

 


 和紙で補填

可能な範囲で、虫穴に和紙で補填します。

 

 横折れ改善処置

天神図の裏面 修理済
前回修理時に補強した部分に加え、新しく生じた横折れ箇所に処置を行いました。

白い線が折れた個所を補強した部分です。

掛け軸を巻く時に折れにくくなります。

 

 補填と補彩

和紙で補填した部分に、色を入れて周囲との違和感を調整。

 掛け軸に表装

修理前の掛け軸の一部に珍しい印金裂がありましたので、修繕して再使用しました。
裂の上の金箔が剥がれないように処置を施し、裏打ち修繕を行いました。
風帯も同一の表装裂ですので、同じ様に行いました。

天神図・印金裂の雰囲気に合うように他の部分の表装裂を取り合わせました。

天神図周辺の裂・・・印金(再使用) 他の裂・・・紋紗・正絹裂
軸首・・・再使用


 参考価格

品の損傷度・大きさ・表装材料等により、価格は異なります。

 天神画修理費     修理工数  ★★★   30,000円
 掛け軸表装費   三段表装 上品    70,000円
 合計    100,000円位

 

 修理例3 三社託宣

*撮影環境や出力画面により、実物と多少の色合いの変化があります。

 


 三社託宣 掛け軸の状態を調査

【三社託宣の寸法】 タテ121㎝ ヨコ52㎝                                    【三社託宣の状態】 和紙に墨で書かれている。強い横折れ多数。虫損。 過去の本格的な修理歴あり          【掛け軸の寸法】 タテ187㎝ ヨコ61㎝                                     【掛け軸の状態】 表装裂の劣化や破損                                      【掛け軸表装の方針】一文字と風帯の金襴は再使用 他は新調

 ライトで過去の修理を調査

通常では、とても見えにくかった部分や、過去の修理痕はライト光で見つけることができます。

虫穴・破れ痕に別の和紙で補填しても、和紙の厚さが異なったりする部分は色が明るく映ります。

明るい部分は、過去の修理痕ですので、修理の際に気に留めて置くことができます。

通常は過去の修理で補填した和紙は一度取り除き、再び補填を行います。

 


 墨や落款部分を強化

膠(ニカワ)水溶液を墨や落款部分に塗布して強化します。
補填して裏打ち和紙を取り替えます

 旧裏打ち和紙を剥がします

左画像は、本紙の直ぐ裏面の和紙(肌裏和紙)を剥がす途中です。

過去の横折れ改善の痕や、新たにできた虫穴が現れます。

虫穴等での過去の補填は取り除き、新たに和紙を補填します。

その後に、高品質の薄美濃和紙で裏打ちを行います。

 

 横折れの改善

前回の修理の段階でも、多数の横折れがあったと想像されます。その後新たに横折れが加わっています。
裏面から、その横折れ部分に細い和紙で補強して巻く時にできる横折れを緩和します。

 修理による変化

一カ所にスポットをあてて、修理前後の変化を現しました。

 

 掛け軸に表装

修理後に再び掛け軸に表装します。

一文字と風帯部分は金襴裂で風合いがありますので、修繕して再使用しました。

使用した表装裂は、古い本紙に合うような少し渋めの色合いになります。

三社託宣 周辺の裂・・・本金襴(再使用) 他の裂・・・正絹裂 軸首・・・黒檀軸

 

 

 

 参考価格

品の損傷度・大きさ・表装材料等により、価格は異なります。

 神号修理費     修理工数  ★★★★   40,000円
 掛け軸表装費  三段表装 上品 やや大型   80,000円
 合計    120,000円位